作州絣の歴史と制作工程を検証し、伝統的な織物として復興すること −展覧会「作州かすり物語」の開催
代表者:道本(古川)文子 所在地:岡山市 設立年:2007年 メンバー数:10名 助成年度:2010年度 文化活動助成
目的
- 岡山県の郷土伝統的工芸品に指定されている「作州絣」について、歴史的経緯や制作の工程を調査研究し、展覧会等の催しや印刷物を通して、地元での再認識を図る。
- 研究の成果に加え、他の絣織物産地での調査や研修、専門家との意見交換をもとに、作州絣の新たな可能性を探り、制作活動につなげる。
- 絣制作を志す者のため、織物の技術継承にも取り組む。
経過
津山市を中心とする県北地域の特産品として、昭和期に全国的に展開し広く親しまれたが、現在は生産の途絶えている「作州絣」の復興を目指し、平成19年6月より活動を続けている。
初年度である平成19年度から、岡山県工業試験場の報告書などの資料をもとに歴史的経緯を調査・研究する活動と、鳥取短期大学絣研究室の「倉吉絣」から技術の習得を目指す活動を並行して行っている。平成20年度には、作州絣の発展に大きく貢献した「大一織物」のご遺族も活動に加わり、貴重な資料や証言を提供してくださった。さらに、翌年度にかけて、岡山県工業技術センター研究員の方々の協力のもと、過去に制作された作州絣の糸や染料についての調査を行った。また、広島県福山市の「備後絣」伝習会との意見交換、鳥取県倉吉市など山陰に伝わる絣の調査等、周辺地域の絣についての研究・研修活動にも着手している。
本年度は、地元での再認識を図るため、平成21年から協力を要請していた津山郷土博物館において、津山市・津山市教育委員会主催による「作州かすり物語」展の開催が実現した。展覧会では、来場者全員に、作州絣の成り立ちや制作工程について説明したリーフレットを配布することができた。
成果
津山郷土博物館での展覧会「作州かすり物語」では、2月5日(土)〜3月21日(月・祝)の会期中、合計911人の方にご来場いただき、地元での「作州絣」に対する再認識を図ることができた。展覧会について、新聞やテレビ、ラジオ等でも多数取り上げていただき、県内の他の地域の方にも、「作州絣」を知っていただくきっかけ作りができたと思う。
また展覧会の会期中、津山市観光協会にご後援をいただき、博物館西隣の津山観光センターにおいて、2月11日(金)〜13日(日)の3日間、絣の制作工程に触れていただくための実演や体験を含めたイベントを開催した。綿の実から種を取り除く「綿くり」、綿を糸にする「糸紡ぎ」、絣模様に染め分けた糸を布に織り上げる「機織り」、絣の布地を使った「小物作り」の4つのコーナー何れも、たくさんの方に体験していただき、3日間で250人を超える方々にご来場いただいた。(催し会場と展覧会場は隣接しており、両会場間で相互に来場者をご案内することで、連携をはかった。)
今回の活動を通じて出会うことのできた方々とのつながりを大切にし、復興に向けた地道な取り組みを続けていきたい。
今後の課題と問題点
- 「作州かすり研究会」の活動を発展させ、津山郷土博物館をはじめ、県内外の研究機関の研究者や専門家の協力を得ながら、引き続き資料調査や制作工程の研究を進めていきたい。
- 美咲町の棚田で綿を栽培し、絣の材料とする取り組みをはじめ、地域活動としての展開を目指す「作州絣を育てる会」と連携し、地域で行われるイベント等にも積極的に参加し、「作州絣」の普及・広報に努めたい。
- 研究の成果をもとに、技術継承のための活動を進めたいと考えているが、設備や材料の経費の面で、会員個人の負担が非常に大きい。会の活動に協力していただける施設や機関などを探すことも含め、大きな課題となっている。