必修化になる小学校英語において地域の人材としてどのように支援できるか
代表者:名合 智子 助成年度:2010年度 教育活動助成
研究の目的
平成23年度より小学校5・6年生の外国語活動が必修化になりました。学級担任が主体となり一人で大部分担当しますが、時にALTと時にJTL(地区の英語の得意な人材)と二人体制で教えることになっています。しかし、外国語活動に関して、担任教師は様々な悩みを抱えているようです。
①英語の発音に不安がある
②ALTとの人間関係
③コミュニケーションを児童に見せる相手がほしい
④丁寧に分かり易く指導できるサポートがほしい
⑤ゲームなどのアイディアを提案してくれる人がほしい
⑥教材がない
こうした担任教師に対して教育委員会から派遣されるALT(AssistantLanguageTeacher)の存在はとても大きいようです。相対的に児童はALTのハイテンションな授業を好む傾向にありますが、担任教師にとっては次のような問題点もあります。
①意志の疎通ができない
②打ち合わせ時間がとれない
③子どもへの指導が徹底出来ない
④ALTはゲーム・歌などについてよく知らない
そこで地域で英語の得意な人に声をかけてJTL(JapaneseTeachersofLanguage)の会を設立し、小学校に仲間を派遣して小学校担任教師をきめ細かくサポート出来るのではないかと考えました。JTLの会では定期的に講師の先生を招き勉強会して、研鑽を重ね、いつ小学校から要請があっても対応できように準備しています。ベネッセ教育研究助成をいただいたことを機会に、外国語活動の授業でどのようにJTLが支援出来るか、岡山市内のある小学校で実践授業をして実態を研究し、検証を試みたものである。
研究の経過
ある小学校の6年生担任の協力を得て「英語ノート2」を使って、1学期間二人体制の授業を4回実施しました。Book2のレッスン2と3のレッスンプラン(それぞれ2時、3時)を別に添付しています。担任教師の希望で2時の練習と3時の発表の手伝いをすることにしました。理由は担任は練習させるのが苦手であることと、発表で子どもに細かく内容までコメントしてほしいとの強い要望によるものです。実践のあと子どもにアンケートをとり文章での授業の感想も聞きました。また、二人体制の授業を共に実施した担任教師からの感想も聞きまとめました。
1)子どものアンケート
結果は下記のようになっている。
1,自信を持って英語を声に出せましたか?
(5〜1までの番号に○をしてください。5の方がよくしたことになります。)
5→37%4→36%3→20%2→4%1→3%
2,お友達と進んでかかわりましたか?
5→46%4→31%3→11%2→6%1→6%
3,日本語と外国語の違いについて気付きがありましたか?
5→55%4→42%3→1%2→1%1→1%
4,外国語の授業は楽しかったですか?(まるで囲んでください)
①とても楽しかった75%②楽しかった22%
③あまり楽しくなかった2%④楽しくなかった1%
5,担任の先生一人と、JTLの先生と二人の授業では分かりやすさや楽しさはどうでしたか?
(下に文章で理由も書いてください。)
☆JTLの先生はとても分かりやすかった。難しい英語の発音も何度も繰り返してもらったのでよく分かった。
☆二人の方が分かりやすかった。
☆担任だけよりも他のことがたくさん出来て楽しかった。
☆JTLの先生はポスターとか持ってきてくれてよく分かった。
☆二人の先生が、みんなが分かるように手分けしていたから良かった。
★全然楽しくなかった。(1名)
2)担任教師よりの感想
担任教師より寄せられた感想は次のようなものです。
☆発音についてゆっくりと口形なども示しながら、児童の必要に応じて何度も繰り返して見せていただけたので、分かり易かった。
☆発音や表現の児童のつまずきを見取り、必要に応じて的確にフォローしてもらえた。
☆児童が興味を持って取り組める教材を準備してくださり、「英語ノート」だけでなく暮らしに溶け込んだ学びができた。
☆クラスルームイングリッシュなどをどのような場面でどのように使えばよいか教師自身のモデルともなり、JTLのいない授業で取り入れたい。
3)研究の成果と課題
実践研究の成果として、子どもや担任教師の感想にも見て取ることが出来るように、JTLは発音面で口形を見せることができたり、子どものニーズに応じて何度も繰り返したり子どもが納得するまで指導できることが分かった。また、「英語ノート」だけでなくいろいろな教材や歌・ゲームを紹介して授業に幅を持たせることが出来た。後に担任教師が単独で教える場合の教室英語のモデルを提供出来る事実も判明しました。何よりも二人体制の場合、より多くの子どもへのサポートが出来ることを検証できました。付け加えてJTLの教師たちは海外留学あるいは滞在の経験を持ち海外の話を聞かせることにより多文化理解の授業にも大きく貢献できます。
このようにJTLは学級担任にとって有効な存在であり、子どもにも良き学びの場を提供できることが実証出来ました。今後は、JTLの存在価値をひろく広報し、自治体の理解を得て、有償ボランティアの制度の構築をすすめていくことが課題としてあげられる。