友達とかかわり合って遊び、共に育ち合う幼児の育成 〜学びを大切にする保育を通して〜
代表者:奥田 悦代 所在地:瀬戸内市 助成年度:2010年度 教育活動助成
研究の目的
直接的・具体的な体験が少なく、他者とのかかわりが苦手な幼児が多い本園の実態から、幼児同士がかかわりを深め、友達と一緒に遊びや生活を展開し、共に育ち合っていくことが大切と考えて、研究主題を『友達とかかわり合って遊び、共に育ち合う幼児の育成』とした。
「人とかかわる力を育てる」ことを研究の視点する中で、子どもの姿、育ちを見る窓口として「遊びや生活の中の“学び”を大切にしていく」こととした。子どもにとって“学び”とは何か、子どもたちが今、何を学び、何を学ぼうとしているのか、何が育っているのか?を意識して“学びの姿”を探っていき、“学び”が「自己発揮」する姿にどうつながり、「人とのかかわりを深め、共に育ち合う」姿にどうつながるか?そのための環境構成や援助について園内研修し、保育に生かしていくことができる研究となることを目指した。幼児の姿をより深く、的確にとらえる力をつけていきたいと考え、サブテーマを〜学びを大切にする保育を通して〜とした。
研究の経過
“学びの姿”を園内研修で取り上げ、職員一人ひとりの保育に対する意識の変容と職員自身の学びとなるようにしていきたいと考えた。
1園内研修の工夫〜理論と実践をつないでいく。
(1)“学びについて考える”園内研修〜理論から園内の共通理解を図る〜
幼児が豊かに学ぶとは、幼児期にふさわしい生活を通して発達に必要なものを身につけていくことである。幼児が環境に興味や関心をもち、積極的にかかわろうとする意欲・姿勢をもち、技術や知識の習得だけでなく、心の躍動を伴い、“実感して分かる”ことであると考えた。
学びとは『知的好奇心からの学び』『人とのかかわりからの学び』があがってきた。このことからこれらの“学び”をていねいに見ていくこととした。
(2)“学びについて考える・1学期の実態から”園内研修
〜実践から見えてきた学びの姿を図表化する〜
1学期の実践から具体的な“学びの姿”をあげ、その姿に必要と考える教師の援助や環境構成を加えていくことで、自分の保育を振り返る機会とし、学びと学びをつなげていく教師の支援を探っていく。図表化することで、発達の過程の共通理解を図っていく。
〈方法〉
○前回の園内研修でまとめた“学びの姿”の表に援助、環境構成を加えていく。
- 学びのための教師の援助、環境構成を付箋紙に書き出す。
- 表に付箋紙を加えていく。(どの学びのための支援であるか)
〈まとめ〉
○学びの姿を理論から分類していくのではなく、1学期に見取った学びの姿を挙げていき、それらを分類していくことで、より理論と実践(保育)がつながっていくことを実感した。
2事例研究〜実践記録から幼児一人ひとりの学びをていねいに見取り、教師の支援の在り方を探る〜
研究の成果
- 学びの姿を具体的に挙げ、『人とかかわる力をつけるために〜学びを大切にして〜』の図表を作成したことで、学びの姿の関係性、学び(人とかかわる力の育ち)のつながりが見えてきた。また、学びのために必要な援助や環境構成を具体的な姿に合わせて考えることで、“学びを大切にした保育”の支援の具体が見えてきた。
- 教師は幼児の学びが育まれる場面を見逃さず、寄り添いながら共感する存在(響感者)であること、幼児の姿、思いに共感する場面を意識して作っていくことの大切さを感じた。特に3歳児にとって「自分を出す」「感性を育む」場面の体験を重ねていくことは大切な学びである。知識や技術よりも3歳児は喜び・発見・驚きなどに共感する援助が学びを豊かにすることが分かった。
- “学び”というキーワードを視点に定めたことで、子どもを見るための窓口が狭まり、子どもの姿を捉えやすくなった。また、教師が常に意識して保育しないと、学びの場面を見逃し、教師が不用意な言葉をかけてしまうと、学びの場面をつぶしてしまうことも痛感した。教師の子どもの見方、捉え方、学びへの意識のもち方の変容から、年齢に応じた子どもの姿を共有することができるようになってきた。学びの“点”をつないで太い“線”となるように、教職員全員が、子ども一人ひとりの育ちを大切にする保育の向上につながった。
- 子どもは今、何を学ぼうとしているのか、を意識し保育してきたことで、見方の変容とともに、肯定的に子どもを捉えるようになり、一人ひとりを見ていくことの大切さを感じ、保育の原点に返ることができた。
今後の課題
- 年度当初は保育に対する思いや考え方の相違から、意思の疎通のはかれる活発な話し合いができる場、関係性を構築することができなかった。また、全職員の目指す子どもの姿・保育の共通理解を図ること、同じ目線で、同じ意識をもって子どもを見つめて支援していく保育の大切さと難しさを改めて痛感した。
- 日々の生活の中で、幼児が学ぼうとし、何を学んでいるのか?を常に意識して保育し、今後、一人ひとりの育ちと集団(人とかかわる中)での育ちをどのように見取っていくのか等について、明らかにしていきたい。そのために実践記録をもとに、園内研修を進めていく視点や方法について様々なアプローチから明確にするとともに、教師自身が保育観、子ども観について自己を振り返り、保育の幅を広げ、質の向上を目指していきたい。保育のことを深く考え合う集団となれるように努力を積み重ねていきたい。