「虐待してしまう親への支援~MY TREEペアレンツ・プログラムから学ぶ」

団体名:子育て応援隊Kara2
代表者:為清淑子・山下明美 所在地:岡山市 設立年:2004年 メンバー数:9名
助成年度:2008年度 文化活動助成
  • 2009.3.15 京山公民館にて

目的

私たちは、「自分は大切な人」という人権意識を根幹に据え、「性の健康教育」や「デートDV防止」のワークショップ、自尊感情を育むプログラムなどを実施してきた。
暴力を受けて育ってきた子どもたちやそういう過去を持つおとなたちが、生き苦しさや、どうしていいかわからないという胸のうちを語り始めるということもあった。虐待をしてしまう親の背景には、子ども時代に受けた虐待等の、これまで人として尊重されなかった痛みや悲しみがあり、それを怒りとして爆発させていると言われる。その中で、自分のもともと持っている力も子どもの持っている力も信じられず、孤立し、深刻化していく。
今回の講演会の講師である森田ゆりさんは、米国と日本で、子ども・女性への虐待防止専門職の養成に30年近く携わり、多様性、人種差別、性差別など人権問題の研修プログラムの開発と研修指導に当たってこられた。中でも、2001年開発のMyTreeペアレンツ・プログラムは、実践開始以来6年間で約250人の修了生の多くが虐待行動の軽減・終止に成功。全国9ヶ所にて、児童相談所や家庭児童相談室、教育委員会、民間団体などの主催で実施されている。今回、そのプログラムの内容や考え方を学び、虐待をしてしまう親とどう関わるのか、どう支援するのかについて考える場とし、岡山での実施を模索したい。

経過

8月、エンパワメントセンターに打診。11月正式に講演申し込み。12月講演日決定。
1月、岡山県・岡山市後援決定。チラシ印刷後、岡山市子ども福祉課、倉敷市子育て支援課のご協力の元、民生委員・児童委員、児童館、福祉センター、児童相談所、公民館等に配布。県内の教育委員会等にも案内送付。
3月15日講演会「虐待してしまう親への支援〜MYTREEペアレンツ・プログラムから学ぶ」開催。

成果

「子どもの虐待とは、これまで人として尊重されなかった痛みや悲しみを怒りの形で子どもに爆発させている行動です(「しつけと体罰」童話館より)」という言葉から講演会は始まった。
そして、「しつけと体罰」について。しつけは自立のために「自分で感じ、考え、行動を決める」ことができるように、ガイドラインを示すことで、ありのままの存在を認め受け止めることがその基盤になる。体罰を使うことで起こる問題点や体罰に代わるしつけの方法を知ることができた。身体的虐待にいたるエスカレーションサイクルにより、なぜ虐待が起こるのか読み解き、怒りには2つの種類があり、怒りの裏側の気持ちにフォーカスすることの重要性にも気づいた。そして、体罰は時には必要と思っていると止められない、体罰に変わる方法で伝えたいという感想が多く寄せられた。
MyTreeペアレンツ・プログラムは、虐待をしてしまう人の感情、身体、理性、魂のすべてに働きかけるもので、木や太陽や風や雲からも生命力の源をもらうという人間本来のごく自然な感覚を取り戻し、さらに自分の苦しみに涙してくれる仲間がいるという、人とつながれることの喜びが、本来誰でもが内に持つ健康に生きる力を輝かせ、回復への大きな力を発揮している。
具体的には、初回面接と14回の参加型学習カリキュラム・中間面接、リユニオン(3ヶ月後の同窓会)と組まれ、「セルフケア」と「問題解決力」を回復することで、虐待行動の終止を目的とし、本人のStrengths(ストレンス:長所・強み・積極性・やってみたという経験等)に注目し、エンパワメントしていく。さまざまな教材はビジュアル化され、ホリスティックアプローチがなされ、学びと自分を語る場での安心感が生き方をも変え、虐待行動の軽減・終止という結果を生み出している。

今後の課題と問題点

今回、MyTreeペアレンツ・プログラムの概要を知り、虐待の背景にある「人として尊重されなかった痛みや悲しみ」を受け止め、理解していくこと、怒りの裏側にある気持ちにフォーカスして、爆発させるのでなく、その心の奥底の気持ちを伝えることの重要性を感じた。虐待をしてしまう親へだけでなく、すべての人にも「ありのままの存在を認め受け止められる」ことが虐待予防に繋がることにも気づかされた。私たちの活動の中で、「尊重」「気持ち」等に焦点を当て、更に発信していく必要を感じている。
岡山での、このプログラムの実施には、行政との協働や地域の力が不可欠である。今回、岡山県や岡山市の行政の方や民生委員・教員等、虐待に関わる多くの方の参加があった。今後、更にネットワークを繋げ、具体的な実施の方向を模索していきたい。そして、虐待の予防に努めて行きたいと思う。

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