備中神楽の保存と伝承

団体名:備中神楽保存振興会
代表者:藤井昭平 所在地:倉敷市 設立年:1995年 メンバー数:86名
助成年度:2008年度 文化活動助成
  • 山陽新聞(平成18年5月29日)
  • 山陽新聞(平成18年10月31日)

目的

備中神楽は、備中地方の農山村一帯に中世の昔から伝わる、数百年の伝統を持った宗教的民俗文化です。
この神楽を、保存・承継・発展という観点から見ると、①文化財保護という理念に基づく対応②地域の観光的需要への対応の二面性が考えられます。
備中神楽保存振興会は、備中神楽の観光的需要への対応という観点から、その演劇的要素の濃い芸能舞を主体にして、より多くの人々にその真髄の舞いを楽しんでいただくことを目的としています。
また、本会は数年前から温羅神楽の研究を進めてきました。吉備津彦の命が温羅を退治する温羅神楽は古くから行われていたようですが、近年ではほとんど途絶えた状態でした。そこで、古い文献等を参考に関係各位のご協力をいただきながら、神能としての温羅神楽の研究を進めていきました。

経過

備中神楽保存振興会は、平成7年1月の発足以来毎年1回備中神楽鑑賞会を岡山県立美術館や岡山市北区表町の三丁目劇場また倉敷市芸文館において開催しています。これは、備中地方の神楽太夫に依頼しての公演です。そのため、頻繁な開催が難しく残念に感じていました。
そうしたなか、鑑賞するだけではもの足らず、「自らも習い演じてみたい」という振興会会員の気運が高まり、備中神楽の習得と振興を活動の柱にして、平成13年9月に三丁目劇場神楽講座部(以下「講座部」という)を発足させました。
週1回の練習を重ね翌平成14年10月より神楽ライブをスタートさせ、平成15年5月より後楽園にての定期公演もスタートさせました。これは、岡山を訪れる観光客の方々に、岡山の郷土芸能を身近に感じてもらうために毎月第3日曜日を基本に行いました。また、老人ホーム等への慰問活動もこのころから行うようになり、平成16年になり、毎週水曜日の夜、開催していた神楽ライブの回数を月1回とし、1回5時間公演の神楽シアターを毎月開催することにしました。神楽シアターは、備中地方で行われている神楽とほぼ同じスタイルで演じることができるようになったものです。平成18年5月、今まで研究を積み重ねてきた温羅神楽を披露しました。
現在は、月1回の定期公演と後楽園や吉備津神社にて温羅神楽を披露しています。

平成19年度の主な活動
神楽ライブ11回
後楽園公演1回
神楽シアター10回
吉備津神社奉納10回
出張公演(慰問等)33回

成果

国指定の重要無形民俗文化財として郷土岡山に誇れる備中神楽ですが、その題材は「天の岩戸開き」をはじめ、「国譲り」や「大蛇退治」など、いずれも出雲神話を題材にしたものでした。これは、文化文政のころに活躍した西林国橋が創案したものです。吉備乃国岡山を舞台にした神楽を観てもらいたいという想いから、今まで演じられてきた吉備津能を再編し吉備乃伝説温羅神楽を発表しました。
吉備津彦の命と温羅の物語は、岡山では古くから親しんできたものですが、最近では温羅の人気が高まり、夏の祭りには「うらじゃ踊り」に大勢の人たちが参加し熱気にあふれています。今回の再編にあたり、試行錯誤を重ねた結果を記録として残し、この温羅神楽が、末永く郷土岡山の神楽となることを願っています。その為にも、今回の出版は、記録としてこの温羅神楽を後世に残す意義深いものと考えています。

今後の課題と問題点

多くの人に、郷土のすばらしい芸能を知ってもらいたいという純粋な気持ちで活動を続けている我々ですが、まだまだ十分な芸が習得できていません。また、メンバーが少ないため、公演依頼にこたえきれない現状にあります。今後ますます練習に励み、本場の備中神楽に負けないような見ごたえのある演技で、多くの方々に喜んでいただきたいと考えています。

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