伝統文化の「能」を児童生徒へ普及し、情操豊かな心の育成に努める

団体名:おかやま山陽高校マイスタースクール「能」
代表者:守安恭一 所在地:浅口市 設立年:2000年 
助成年度:2008年度 文化活動助成
  • 後楽園能舞台で「羽衣」を舞うおかやま山陽高校生徒
  • 後楽園能舞台で「猩々」を舞う三勲小学校児童
  • 「はじめての能楽大会」パンフレット
  • 山陽新聞(平成20年11月14日)

目的

世界標準という言葉が合い言葉となっている現代、私たちは日本人としての寄る辺を見失ってしまいがちです。体験を通してそれを感じ、新たな目を開いてくれるのが伝統文化です。平成12年から能を勉強してきましたが、1年間の経験を通して生徒たちは落ち着きと情操豊かな心を身につけることができたように思います。「能」を学ぶことで、その雅と幽玄さ、静と動の調和を経験し、現代の高校生に日本の伝統のもつ美への関心を高め、伝統文化に携わるもののすそ野を広げたいと考えています。また、文化活動を通して豊かな心と落ち着いた調和の心を育てていくことも目的としています。

経過

平成12年度、総合学習の時間(マイスタースクールと呼称)に各界で活躍されている先生方に講師としておいでいただき本物の技能を学ぶという取り組みを始めました。「能」はその中のひとつで、広島県福山市にある喜多流大島能楽堂で活動されている大島衣恵先生、大島文恵先生、そして森田流笛方の八木原周平先生をお招きして謡、舞、器楽の技能の習得に努めてきました。基本的な立ち居振舞いから始まり、専門的な能の知識までを学ばせていただきました。その成果を発表する場として平成12年の後楽園築庭300年記念をきっかけにこれまでに9度実施いたしました「はじめての能楽大会」があります。これは毎年11月中旬に岡山後楽園能舞台で岡山市立三勲小学校と合同で開催している舞台です。毎年地域の方々や観光客など多くの方が会を見学に来ておられ、好評を博しています。しかし、この会は単なる児童・生徒の単なる発表の場ではなく、能という日本の伝統文化を広め、何よりもその伝統に目を向けるきっかけを作るものにするという主旨で活動し、大きな意義があったと思います。今後も伝統文化を育む種を蒔くことで、文化振興の発展のための一助となりたいと考えています。

成果

平成20年11月13日の岡山後楽園での能楽大会も大変盛況で、観衆の方々からも多くの拍手をいただくこともできました。伝統文化を子どもたちが行うことで保護者の方や地域の方も巻き込み、これまでに触れたことがなかった「能」の世界を知るきっかけとなる役割を、ほんのわずかではありますが果たせたように思います。普段身近にない芸能を実感できる場として重要な会だと思っています。
また、子どもたちにとってもこれまでに習得することができた伝統芸能の技を、本物の舞台に立ち表現することの意義も大きかったように思います。慣れない正座から始まり、すり足でのゆっくりとした動き、じっとしているだけでも力が必要な立ち方などの立ち居振舞いは、見ているだけではとても理解ができず、共感もわかなかったはずです。自分たちで行うことで、伝統文化の大変さを理解することができたのです。初めは見様見真似、何とかこなしていたというレベルの生徒たちが稽古を重ねるにつれ、その時間を真剣に熱意を持って打ち込んでいく姿を見てきましたので、「能」をはじめとする伝統文化が持つ教育力の大きさにはいつも驚かされます。周囲との調和、心の落ち着きなど短い時間にもかかわらず、知らず知らずのうちに大きな成長を遂げているのです。伝統文化が、これだけ長く受け継がれてきた答えがここにあるように思います。子どもたちの成長のために、また、日本が誇る「能」という文化の伝承の一助となるようにこれからも継続をしていかねばならないと考えています。

今後の課題と問題点

平成20年度は2月に福山リーデンローズという会場で「芸能大全」という行事があり、出場する機会を得ました。せっかくの活動でありますので、その発表や成果を多くの方々に見ていただける場面を増やしていかなければならないと思います。また、この活動をはじめて平成21年度で10年目を迎えます。継続していくことも大切な課題です。

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