早期英語履修者に対する中学・高校の教材および指導法の開発

団体名:ノートルダム清心学園NELP研究会
代表者:小谷 恭子 所在地:岡山県 
助成年度:2008年度 教育活動助成
  • 実践英語の授業
  • 高校NELPの授業

研究の目的

ノートルダム清心学園清心中学校では、平成17年度より3年間、貴財団の英語教育重点校としての指定を受け小学校における早期英語履修者に対するカリキュラム・教材開発をおこない成果を上げてきた。その中で、小学校段階までに音声面を中心とした学習をしてきた生徒たちに適切なリーディング指導を行うことで、総合的な英語力の向上がみられることがわかった。このリーディング指導の研究を継続し、中学校から初めて英語を学習する生徒および高校生にも応用できる指導法を確立させていきたいと考えた。また、最終的に自分の意見を英語で十分伝えることのできる生徒の育成を実現させるための具体的方策として、次の3点について研究を行った。
①早期英語履修者に対するリーディング指導の有効性の継続研究
②早期英語履修者を含む中学生に対する発音指導法の研究
③清心女子高等学校における学校設定科目「NELP」のプログラム開発

研究の経過

本校には、英語プログラムとしてSELP(SeishinEnglishLanguageProgram)とNELP(NativeEnglishLanguageProgram)があり清心中学校から清心女子高等学校までの6年間を、学年枠にとらわれない学習計画のもとで授業をしている。また、高校では文理コースと生命科学コースがあり、特に生命科学コースではスーパーサイエンスハイスクール(以下SSH)学校設定科目に加え、「英語力の強化」により進路実現を目指している。

1早期英語履修者に対するリーディング指導の有効性の継続研究
本校のNELP教室には、約3,000冊のグレイディッド・リーダーズ・ライブラリがあり、中学生・高校生全体が活用している。
中学校のNELPでは、GTECforSTUDENTSBASICにおけるスコアの変化やブックレポートの質的な変容を過去3年間比較検証してきた。今年度もグレイディッド・リーディングを中心としたリーディング指導を継続指導しGTECforSTUDENTSBASICや実用英語技能検定試験を受験させた。
高校の生命科学コースでは、「実践英語」という多読中心の授業でリーディングの速度や精度の変化を検証した。実践英語の研究実践報告を平成20年7月12日に第2回清心中学校リーディング研究会で行った。

2早期英語履修者を含む中学生に対する発音指導法の研究
中学校入学前に本校がオリジナルに作成した「フォニックスの基礎」の冊子とCDを中1生全員に配布した。小学校時代に音声を聞き取る活動を経験してきた生徒たちが、中学校で正しい英語の発音ができるように教科書「PROGRESSINENGLISH21」をNativeの英語教師と日本人英語教師がそれぞれの英語の授業において、発音記号と口蓋側面図を用いて音声中心の発音指導を行った。
長年、中学・高校ともに校内英語スピーチコンテストを開催し、暗唱の部とオリジナルの部を設け、生徒たちは英語の発音だけでなく、英語で自分の意見を述べる機会にもなっており、校外のコンテストに出場するためのオーディションも兼ねている。参加生徒の発音レベルが非常に高くなっている。

3清心女子高等学校における学校設定科目「NELP」のプログラム開発
中学NELP出身者および英検2級以上の英語力をもつ生徒を対象としたものである。実施形態は次の3つの講座の中から、自分の興味や必要に応じて、学期ごとにどれか1つの講座を受講するものである。
(1)CreativeConversation:さまざまなトピックに関する会話、およびディスカッションを行う。また、スキットや即席の対話なども行い、オーラルな会話能力の向上を目指す講座である。
(2)ResearchTopics:英語によるレポート作成、プレゼンテーション、ディベート等を行い、ライティング能力とプレゼンテーション能力の向上を目指す。
(3)IndependentStudy:Nativeの英語教師の指導のもと、英語の個別学習を行う。TOEFL、TOEIC、実用英語検定などのテスト対策や、文法、リスニング、リーディングといった言語能力の強化を目指す。

4高大連携の取り組み
高1NELP生は、週1時間のオーラルコミュニケーションⅠの時間をNativeの英語教師の授業に加え、中国学園大学の協力のもと実施し、今まで身につけてきたハイレベルの英語力をさらに伸ばす授業内容となった。
高2文理コースの「高大連携英語ハイレベル講座」を選択した生徒は、実際にノートルダム清心女子大学へ行き、大学の先生方から直接英文学の講義や音声の指導を受けた。

5指導者の研修
生徒だけでなく指導者の研修として、中学と高校のそれぞれにおける授業研究を行い、校内研修を実施した。また、学外者を含めたリーディング研究会を開き、実践報告や意見交換を行った。

研究の成果

リーディング指導の継続研究により、中学NELP生のGTECのスコアの伸びからも正確に英文を理解し、必要な情報を読み取る力がついてきている。また、全体的に文法力をはじめ、語彙力やライティングの内容構成の豊かさなど力がついてきている。NELP生は英検準1級以上を目指すハイレベルの集団となってきている。
発音指導法による研究の成果として、校外英語スピーチコンテストにおいて中学生だけでなく高校生も好成績を残した。
高校における「NELP」のプログラムを中学NELP出身者および英検2級以上の英語力をもつ生徒を対象としたことから、ハイレベルな授業内容とすることができた。また、受講を希望する生徒が英検2級取得を目指すことから、多くの生徒たちの英語学習へのモチベーションを高めることもできた。

今後の課題

早期英語履修者に対する中学・高校の教材および指導法の開発を行ってきた中で、小学校時代に音声を聞き取り、語彙を音声で習得してきた生徒たちが、中学校で正しい英語の発音とスペリングをマスターできるようになるためには、小学校と中学校が連携し語彙習得のための教材が必要であることがわかった。小学校で英語が必修化された今、小学校・中学校を通した系統的・発展的なオリジナルの英語語彙力定着ノートを作成し、一般に活用できる形を作り上げたいと考えている。さらに、中学校での正しい英語の発音指導法を継続研究し、Nativeの発音を身につけさせたい。中学校段階で必要な語彙を習得した生徒たちが、最終的に正しい英語の発音で自信を持って人前で発表したり、自分の意見を英語で十分伝えることのできる生徒の育成を実現させたい。さらに、小学校と中学校が連携し能動的に使える英語力の育成を目指していきたい。

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