生活リズムを見直す健康教育教材に関する研究
所在地:岡山県 助成年度:2008年度 教育活動助成
研究の目的
児童の基本的生活習慣の重要性が注目され、心身の健康や生活習慣病等との関連について報告されてきており、児童や保護者を対象とした健康教育など積極的な取り組みがなされている。しかし、“習慣”が故に基本的生活習慣に関する調査を実施しても、その後の対策及び改善策の実施が困難な現状がある。そこで、児童の基本的生活習慣の確立に向け、『すっきり習慣カード』を健康教育教材として用いた“生活点検”を実施し、生活リズムを見直すための取り組みを試みた。
研究の経過
岡山市御津地区内の3小学校(御津小学校、御津南小学校、五城小学校)の協力のもと、各校1回から2回『すっきり習慣カード』による“生活点検”を実施した。
1PDCAサイクルの活用した取り組み
『すっきり習慣カード』を単に児童の生活状況を把握するだけではなく、児童が自ら目標を定めて、それに向け保健行動をとれるように、児童が目標とする就寝時間を設定し、①その目標を守るために自分で工夫する行動計画を予め設定する(P:Plan計画)。②1週間の生活状況を記録する(D:Do実行)。③1週間の生活状況について、自分で振り返る(C:Check評価)。④親子で生活習慣に対しての振り返りを行う(A:Action見直し)という、PDCAサイクルを活用した形式を取り入れた。
2『すっきり習慣カード』の内容について
1・2年生用(資料1)は、就寝時間、朝の目覚め感、朝食摂取の有無、朝夕の歯磨きの有無について、3年生から6年生(資料2)までは、就寝時間、起床時間、睡眠時間、テレビ・ゲーム・パソコンの時間、朝の目覚め感、朝食摂取の有無、朝・夕の歯磨きの有無となっている。
3年生以上は、時間軸の経過がわかるように、就寝時間、睡眠時間、起床時間、テレビ・ゲーム・パソコンの時間がわかるように、24時間で記した枡目となっており、それぞれの時間について一目瞭然で確認できるようになっている。また、児童が早寝に取り組めるように枡目の特徴を活かし、3年生以上は目標とする就寝時刻に赤線を引き、児童一人一人が早寝を意識できるように工夫している。
3シールの活用
以前の『すっきり習慣カード』では色塗形式で実施していたが、シール形式にすると児童の興味と関心がわき、すっきり目覚め朝食を食べてシールが貼れるように頑張ろうと児童の取り組みに対するモチベーションを向上させていた。また、『すっきり習慣カード』を実施した後に、児童が1週間の生活習慣を振り返る際に、視覚的に訴えることで客観的に振り返ることを容易する。
研究の成果
1児童から
睡眠や朝ごはんの大切さについて学んだ授業での知識を、目標とする就寝時間のための早寝の工夫やすっきり目覚めるための工夫といった行動計画に反映させていた児童が多く見受けられた。その結果、『すっきり習慣カード』を1週間実施した児童の感想からは、“睡眠の大切さ”を実感し、それにより“からだの気持ちよさ”を体感していた。この生活習慣を維持するために調査後も継続して実践するための“次への取り組み”となる目標を立てていた児童もいた。
このように児童の健康への動機を維持・継続するためにも、『すっきり習慣カード』を用いることで、児童の健康観の強化や是正を図るために有用な方法の一つであると考える。
2保護者から
調査後の多くの保護者からの感想は、“子どもの頑張り”に気付き、“子どもの体調の良い変化”を感じ、“子どもと一緒に取り組む”課題を見つけていた。『すっきり習慣カード』を介して、家庭での生活状況や過ごし方を改善しようという保護者が子どもの生活習慣を改善するための意欲を向上させていることが伺えた。そして、児童と保護者が共に生活習慣の様子について振り返り、児童の課題となる生活習慣を学校と家庭の双方で把握することができ、その課題について共通理解として取り組む一助となっていた。
3担任から
1週間の調査が終了した時点で、児童と保護者からの感想が書かれた『すっきり習慣カード』はクラス担任に提出される。『すっきり習慣カード』には、担任からも感想を書く欄を作成している。担任からは、児童の生活状況や改善の必要性がある点や、児童の頑張りをほめるコメントや『すっきり習慣カード』での調査後にも継続して欲しい生活習慣や早寝に向けたアドバイスなど、児童に寄り添ったコメントが書かれていた。
4養護教諭から
基本的生活習慣づくりのために活用されている他、長期間の休み明けの体調調整、体育祭や宿泊研修までの体調調整など、行事を行う前の児童の体調調整を図るためにも活用されていた。『すっきり習慣カード』の実施期間は、保健室に来室する児童が少ない学校もあり、短期間でも体調を整えることに寄与しているため、これを継続させ、積み重ねてよりよい基本的生活習慣を築いていくことの大切さが伺える。
養護教諭からは『すっきり習慣カード』の実施後、保護者に対し“保健だより”を通じて、実施結果や今後の課題事項について啓蒙がなされていた。
以上より、『すっきり習慣カード』を用いることで「健康を維持・促進するために、健康を理解し、活用する個人の能力を決定する個人の社会スキル」であるヘルスリテラシーを身につけ、実際に児童が気持ちよさを体験したことで保健行動がとれるよう、継続した行動変容に寄与することが示唆された。
今後の課題
基本的生活習慣という行動変容が困難な目標に向かうために、児童がその大切さに気づき、自ら実践できることで生きる力を身につけられるように、そして習慣化できるよう支援していく必要がある。そのためには、なぜ基本的生活習慣が大切かという知識を得るだけでなく、よりよい基本的生活習慣を身につけるために“頑張りたい”という児童の意欲を継続させられるように、一番身近な存在である家族や周囲からの支援を大切にしていかなくてはならない。また、将来の親となっていく児童が、よりよい生活習慣を身につけ次の世代に伝達できるように、成長しても生涯を通じた健康づくりを実践できるような取り組みとなる必要がある。
児童が『すっきり習慣カード』で自身の生活を見直し、規則正しさやすっきり目覚めることが快適であると感じ、友人との人間関係を楽しく円滑にできるように、学校生活や日常生活を過ごせるように、引き続きその効果や影響について検討したいと考える。