環境への意識を高める郷土デジタル教材の開発 〜住みよいくらしを支えるゴミ処理の仕事〜

団体名:岡山市郷土デジタル教材制作グループ
代表者:石井 聡 所在地:岡山市 
助成年度:2008年度 教育活動助成
  • 図1 作成した教材のイメージ
  • 図2 授業における活用

研究の目的

小学校第4学年社会科「ごみはどこへ」の学習を支援する郷土デジタル教材と、授業での活用法パッケージをを開発し、実践活用を通じてその効果を探る。環境への負荷を低減する循環型社会の実現は、現代人に課せられた最重要課題である。児童の身近で行われている行政や市民のゴミ処理に対する取り組みを具体的に紹介する教材を開発し、提起された授業パッケージを活用することは、授業の質的な向上に寄与するものと思われる。これらを活用した学習により、社会科時間の実践の中で、児童の環境に対する意識を高めようと考えた。

研究の経過

申請者らは、過年度より岡山市内の情報教育の担当者を中心に、小学校社会科で活用する岡山市の郷土デジタル教材を制作してきている。平成17年度は「人々の安全を守る仕事−警察と消防のはたらきのひみつ−」、平成18年度は、「児島湾干拓」についての教材開発と実践活用、平成19年度は第3学年の単元「岡山市ってどんなところ」を題材に教材開発に取り組んできた。平成20年度は第4学年の学習「住みよいくらしを支えるゴミ処理の仕事」に焦点をあて、教材の開発を行いたいと考えた。

1制作する郷土デジタル教材の構想と設計
郷土デジタル教材は、一斉指導の中で教師が提示を行う場面、および、児童が調べ学習をする場面を想定して制作する。また、岡山市内の小学校で一般的に使用されている社会科の副読本「ふるさとおかやま」(岡山市小学校社会科研究会編、日本文教出版発行、以下副読本という)の指導の流れと内容に準拠する構成とし、授業で活用することが効果的と思われる、動画、静止画、図解等のコンテンツによりまとめることとする。コンピューターでの活用を想定し、HTML形式での制作とした(図1)。

2取材・デジタル教材作成
(1)副読本で取り上げられている単元に沿った学習内容に関する取材等(表1作成した教材の構成PDF参照)
必要な教材を取材したり、副読本等の資料をデジタル化したりして教材を整備した。作成したデジタル教材は表1のような内容である。副読本「ふるさと岡山」の教材配列に準拠して教材を構成した。
(2)学習指導の簡易指導案と、活用可能なデジタル教材の指定
副読本の指導内容に準拠した簡易指導案から、本デジタル教材の中の必要なコンテンツにリンクを張り、教師が指導案の中から容易にコンテンツを指定して、一斉指導の中で活用できるようにした。

3教材のモニタリング
制作した教材、およびパッケージについて、岡山市内の第4学年学級担任数名にモニタリングを依頼し、次のような知見を得た(表2教材のモニタリングPDF参照)。
これらの評価をもとに、教材の配列を再構成したり、動画教材でのテロップの変更等を行った。

4授業での活用
(1)第4学年「住みよいくらしを支えるゴミ処理の仕事」
ア単元の導入「クリーンセンターのひみつ」における活用
「クリーンセンターのひみつ」の場面で、実地見学の前に、岡山市東部クリーンセンターの概要、ゴミ処理の様子、東部リサイクルプラザの役目や、人々のはたらき等について、作成した教材を活用して調べた(図2)。社会科の副読本でクリーンセンターのゴミ処理の様子を確認した。教師による施設内のゴミ処理の様子の提示の後、二人一組の児童がコンピューターを使い、施設の内部の様子などを繰り返し視聴して、分かったことをワークシートにまとめた。
イ学習における効果
授業後の児童の感想には、「クリーンセンターのゴミの分け方や処理方法をくわしく見つけたい。」「どうしてこんなに大きな施設が必要なのだろうか。」といったものが見られた。見学の視点を明確にしたり、人々のはたらきについての興味・関心を高めたり、ゴミの問題に対する意識を深めたりしている意見が見られた。教材の映像情報が、副読本の内容や教師の説明を効果的に補完した。

研究の成果

研究の成果について以下に記す。
①郷土デジタル教材「住みよいくらしを支えるゴミ処理の仕事」の作成により、小学校第4学年社会科の指導に効果的な映像教材とそれらを活用した指導事例を提案することができた。
②映像情報の活用を通じて、児童が「現在の岡山市が抱えるゴミ処理の問題点」に気づいたり、はたらく人々の思いについての理解を深めたりすることができた。またそこではたらく人々の思いについて考え、児童なりにゴミ問題の解決方法や住みよいくらし方を工夫しようとする意識が見られた。

今後の課題

平成20年度、貴財団の支援により郷土デジタル教材の制作がまた一歩進んだことに感謝したい。今後も継続して学習を支援する郷土デジタル教材、および指導事例を提案したい。取材や教材作成は、教師にとって力の求められる活動だが、またとない教材研究でもある。よりよい授業作りのために努力を続けたいと考える。

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