ディジタルコンテンツを活用した国際理解教育の教材開発と実践

団体名:森  泰三  岡山県立岡山一宮高等学校
所在地:岡山県 
助成年度:2008年度 教育活動助成
  • 図1 配布用のディジタルコンテンツ
  • 図2 授業の様子
  • 図3 ディジタルコンテンツの構成

研究の目的

国際理解教育ついて、参加型学習のフォトランゲージ、イメージアップ、ランキングなどを取り入れて、生徒自身が考え、問題解決ができる授業の方法がある。しかし、高等学校において大量の情報量を多様な考え方をもった生徒に対して、国際理解教育の問題解決学習には不十分な部分もある。そこで、より効果的な学習方法としてディジタルコンテンツを活用し、生徒の多様性に対応した、授業実践を行い、その成果を検討する。

研究の経過

1JICA中国教師海外研修
教師海外研修の日程は、2007年7月28日〜8月11日で、ガーナの滞在日数は12日間であった。研修には中国地方の教員12名、JICA職員、社団法人青年海外協力協会職員、毎日新聞記者の15名が参加し、現地では青年海外協力隊員3名の同行があった。
また、研修の内容としては、青年海外協力隊員が任務している小中学校、短期大学、教員養成校、病院などを訪問して、隊員の活動を視察したり、小中学生および教員との交流と情報交換を行ったりした。その他に、ホームビジットで現地の家庭の様子を視察した。

2ガーナにおけるJICAの活動
2007年現在、JICAのガーナ事務所では、30周年を迎え、延べ900人が派遣されている。ガーナでは青年海外協力隊とシニア隊員を中心に106名が活動している。経済成長を通じた貧困削減を方針として、具体的には地方農村部の活性化、産業育成をサポートしている。
青年海外協力隊は、現地の人々と生活をともにし、農業や水産業、教育、医療など自分のもつ技術を生かして、幅広い分野で技術指導や開発事業への協力を行っている。応募年齢は20〜39歳で、現職の教員としての参加もある。シニア海外ボランティアは、開発途上国の未来のために豊かな知識や経験を生かしたいと志望する40〜69歳までの中高年者が対象となり、定年退職後に応募する人々もいる。今回の研修では、11人の隊員の活動を視察したり、聞き取りをしたりすることができた。それらの人々から受けた印象として、青年海外協力隊の人たちは、自分探しやチャレンジといったことで応募した人が多く、また、シニア海外ボランティアの人たちは、国際貢献ということを強く意識しているように感じられた。どちらにしても、現地の人々と生活をともにして任務している大変な状況が理解できた。

3教材収集とディジタルコンテンツの作成
JICA中国の教師海外研修(ガーナ)に参加し、現地小学校での児童へのアンケート、青年海外協力隊員へのインタビュービデオ、ガーナの自然・産業・人々など全般的な写真、ガーナ大学のブックストアで購入した書籍など多数の教材の元となるものを収集した。ビデオは、参加教員のうち2名が係となり、撮影したものである。内容は青年海外協力隊員のインタビュー、ガーナの人々の暮らし、都市や村落の景観などである。全体でDVD-Rで17枚という大量のデータである。今回の研究では、特に青年海外協力隊員やJICA現地スタッフの発展途上国への思いや考え方をビジュアルに伝え、発展途上国の現状や国際貢献について考えさせる方法としてディジタルコンテンツを作成した(図1)。なお、このディジタルコンテンツはMicrosoftPowerPointとWindowsMediaオーディオ/ビデオファイルのビデオをリンクさせて、MicrosoftPowerPointスライドショー形式に保存したものである。
この研究により、次の2つを期待した。まず、生徒がそれぞれコンピュータを操作し、学習を進めて、興味のある分野を見ていくといったディジタルコンテンツの活用システムのもとで、効果的に国際協力の課題を見いだし、解決に向けた方策を考えることができる。次に、全体として大量のデータがある場合においても、個々の興味関心に応じてコンテンツを選択し、考察することができる。

4授業実践
授業は、地歴公民科の地理Bにおいて45分授業1回使い、「現代世界の地誌的考察」の項目で、地形・気候・農業・民族などと関連させながら扱った(図2)。コンテンツの内容は図3のようになっており、「JICA」「青年海外協力隊」「シニア海外ボランティア」などについて簡単な内容を理解したのち、興味関心のある協力隊員やJICAスタッフのインタビュービデオ、活動紹介ビデオを視聴する。その後、「ガーナについて」、「国際協力について」、「協力隊員について」、「ディジタルコンテンツについて」の各項目に対して簡単なレポートをするというものである。なお、このディジタルコンテンツの容量は、ビデオを多数含んでいることから約2ギガバイトである。これを、校内の公開用ネットワークのファイルサーバーに置いて、それぞれの生徒がそのファイルを開いて見るという形式で実践した。

研究の成果

授業の最後に、簡単なレポートを書かせた。表1(表1生徒のレポートPDF参照)は生徒の授業レポートをまとめたものであり、それから研究成果について考察する。「ガーナについて」という項目では、動画や説明の効果もあり、人々の生活ぶりや地域の景観を感じ取ることができている。ただ、「衣服があるのに驚いた」という意見があり、アフリカを自分のあるイメージで捉えているようで残念である。この授業以前に基礎的な知識をより学習させる必要を感じた。「国際協力について」という項目では、ほとんどが前向きで発展的な意見で、日本国内で行う国際協力と現地で行う国際協力の2つに分けることができる。また、援助のあり方を考える生徒もあった。「協力隊員について」という項目では、基本的な協力隊の内容を理解した上での意見が多数であった。「ディジタルコンテンツについて」という項目では、一部のパソコンの不具合が発生したものの、ビデオ映像での理解度の深まりがあった。これらのことから期待した成果をほぼ達成できたと考える。

今後の課題

図1のようにディジタルコンテンツをDVDに収め、希望する生徒やJICA中国に配布した。自分自身が今後の授業の中で活用し、また、他の方々にも活用していただけるように努力したい。本研究では、協力隊員の活動を中心に国際協力を考えさせる教材づくりを行ったが、他の多数のデータがあり、それらを使った教材づくりも行いたいと考えている。

PDFアイコンPDFで見る