中世の為替制度の研究と高校日本史におけるその教材化

団体名:岡山県立岡山朝日高等学校
代表者:辰田 芳雄 所在地:岡山市 
助成年度:2004年度 教育活動助成

研究の目的

中世の為替は、現代の小切手・約束手形に似ている。小切手は、小切手の振出人が特定の銀行に当座預金を持ち当座預金残高内の額面の小切手を取引相手に渡し、取引相手はその小切手を振出人の当座預金のある銀行に持参して現金を手に入れるしくみである。約束手形も小切手と同様なしくみであるが、振出人が支払いの日付を記入するなどの点が異なる。当座預金に残金がなくなった場合、小切手・手形は「不渡」となる。高校日本史では、1923年の関東大震災の時に発生した震災手形(震災のために不渡になった手形)を説明する際に、約束手形のしくみを学ぶ。しかし、中世の為替は、現代の約束手形とまったく同様ではない。中世においても金融業者は存在したが現代のような銀行業務は行われておらず、当座預金も存在しないので、中世の為替のしくみを別に説明しなければならない。
ここでは、中世の為替のしくみがよくわかる事例を紹介し、高校日本史の授業の教材を提供する。なお、為替の手形である割符の役割の新説が提起され、定説化しようとしているがそのことへの批判も行う。昨年の8月から10月にかけて兵庫・岡山・広島合同企画展『津々浦々をめぐる一中世瀬戸内の流通と交流―』の展示協力と生徒引率をして博物館見学も行った。東京・京都では各研究機関や学会で資料収集を行った。

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